「今、行くね!」


もう一度、彼女を見た。


「あと、わたし、実は男子と会話ができなくて……それで女子と男子に対する態度が違かったから、ぶりっこと言われたらそうかもしれない。でもそれもわたしだから、あなたの言うことは気にしないことにした。ごめんね」


「何ぶりっこ正当化してんの?バッカじゃない。対して可愛くもないくせに、媚び売って……ゆきに近づいて、本当にムカつく」と、まくしたてるように言った。今まで冷静を装おっていた彼女の仮面が剥がれ落ちた気がした。


「……やっと話せたね」


笑うと、「はっ?」と、こめかみが動いた。杏奈がわたしをまた呼ぶ。行かないと。


「じゃあ、マラソン頑張ろうね」


わたしは待っている杏奈に向かって走った。両手を腰にあて「何してんのー?」と、声をかける。


その肩越しに、市ノ瀬くんの背中が見えた。


こんなに人がいる中でも見つけられる。わたしだけの特別に、やっぱり負けないでねって、心の中でエールを送った。