「何かあった?」


「最近、彩子と連絡とってなかったから。行くよ。何かわかったら、」


教えてとお願いしようと思ってやめた。


「やっぱり彩子に連絡してみるね。教えてくれてありがとう」


そう言うと、頷いてから「そういえば」と、思い出したように言った。


「今朝、市ノ瀬と話したんだけどさ」


「えっ?」


驚いた。実は市ノ瀬くん、隼人くんと話せてないって言ってたから。ちょっと避けられてるっぽいようなこと言ってて、わたしも気にしてたんだ。


「急に声かけられたと思ったら、唐突にマラソン勝負しろって言われたよ」


腕組みをして呆れたような顔をする。


「勝負するの?」


「一応ね。長距離だから、市ノ瀬なんかに負けてられないしね」


「あっ……そっか。足の調子ももう良くなったんだもんね」


本当に嬉しいと思った。


「どっち応援する?」


「えっ?」


わざとな質問に一瞬、答えがつまりそうになったけど、「両方」と答えると「優等生な回答」と、笑われた。


「まあ負けられないね。あいつが負けたら市ノ瀬の一番大事なものをもらう約束してるから」


「いちばん、大事なもの?何?」