わたしはちゃんと市ノ瀬くんの瞳に映れるように向き直った。


「ありがとう」


「ん?」


「わたし、ずっと逃げてばかりだった。でもね一度ダメでもまた受け入れてもらえることも知れたから……わたしが思っていた世界とは違う世界があって、そんな喜びがあるってこと教えてくれて、ありがとう」


「そんなのお互い様だよ」と、市ノ瀬くんとは微笑んだ。


情けなくてもいい。何も出来なくてもいい。誰かと比べたら劣るわたしでもいい。


真っ直ぐな彼の瞳に、ちゃんと向き合えるわたしであれば。


「大好きだからね」


勇気をもってもう一度伝えると、優しいキスがわたしに落ちてきた。