男子と会話はできません


正面玄関から外へ出た。


体育館沿いをゆっくり歩いて駅へと向かう。たまに試合帰りのようなジャージを来た子に先を越される。


立ち止まって見上げた体育館。階段があり、扉が見えた。立ち入り禁止と書かれていて、入ってはいけないみたい。


まだ中にいるのかな。


市ノ瀬くんは、若槻さんのこと実際どう思っていたんだろう。


実は若槻さんがああいったけど、ちゃんとした気持ちはあるのかもしれないね。


付き合っちゃったら……。


想像するだけで、心が紐で縛られたみたいに苦しくなる。


もう少し時間はかかるけど、市ノ瀬くんの幸せを願えるようになりたいな。








いつも誰かに背中を押してもらってばっかりだった。


でもそのことに感謝できる今は、わたしだって誰かの背中を押すことができる人になれるかもしれない。


そんな気がした。


「市ノ瀬くん、ありがと」


聞こえないのに、体育館に向かって呟いた。また泣きそうになるから、駅へ向かう足を速めた。