でも後悔しないように、伝えられただけ良かった。
そう言い聞かせながら、階段に背を向けた。
そこで、より戻したいとか、まだ好きだってことを伝えていないことに気づいた。
だけど、口に出さなくてもあの態度で答えはわかったようなものだ。
急に試合を観に来たわたしの行動から、気持ちだって汲み取れたものかもしれない。
終わったんだ。
本当に、終わったんだ。
実感すると、鼻の奥がツンとして痛くなる。
涙が出そう。そう思ったら簡単に頬を転がっていった。
指でぬぐって、鞄からハンカチを取り出した瞬間、失敗したなと思った。涙腺がまた弾かれる。
市ノ瀬くんにお守り代わりに渡していたハンカチを持ってきてしまっていたからだ。
本当になんの役にも立たなかった。やっぱりお守りじゃなくてただのハンカチだよ。
ぎゅっと握りしめた。そのまま頬にあてる。市ノ瀬くんの匂いもなにも残っていなくて、よけいに哀しくなった。



