「ママ、着付けしてー!」


隼人くんと約束した花火大会。行くのは中三のあの日以来。しまいこんでた浴衣は少しカビくさくなってて、ママに言ったら、新しいものを買ってくれた。


一緒に買い物に行くとママは、わたし以上に張り切って選ぶから、最終的にはママ好みをセレクト。


水色の生地に金魚、菊の花が描かれていて、少し子供っぽい気もしたけど、赤い帯を締めるとママは満足そうに「やっぱりあなたには、似合う色ね。可愛い」と、言った。


「ママ、帯きつい」


「何言ってんの。こんくらいきつくしないと、後が大変なんだから。着崩れしたくないでしょ。でも胸がなくて良かったわね。小さいほうが似合うって言うしね」


「はいはい。ママに似たからね」


余計な一言を嫌みで返す。実際そうだもんね。


姿見でもう一度、確認する。おかしいところないよね。


時計を見ると、向かうのに丁度いい時間だった。