「隼人くん。わたし、夏祭り行くから」


「えっ?本当に?」


「ごめんね。また隼人くんのこと避けそうになってた。ちゃんと考えるからね」


思ってもいなかった返事に今度は俺が動揺していた。一緒に行きたいと誘ったのは、自分なのに。


「隼人くん?」


「ごめん。正直、無理だと思ってたから、驚いた」


「そう、思っちゃうよね。ごめんね。わたし、自分のことしか考えてなかったから、本当にどうしてこんなわたしなんか好きなんだろうって……」と、言ってハッとした顔をする。そのまま口ごもった。


「どうしてだろ。理由があれば楽なのにね。好きとか嫌いになる理由とか高塚につけることができればこんなに思ってなかったよ」


そう言うと、頬を染め、目を伏せた。


「浴衣着てくる?」


「浴衣?」


「また高塚の浴衣見たい。すごい可愛いかったから」


「可愛いなんて、とんでもございません」と、両手を左右に振った。


あのとき、本当に言葉が少なかった。


そう思ったことも、伝えられなかった。


思ったことは伝えたい。これからそういう時間を高塚と過ごすことができるんだろうか。


まだ何も見えない。届かない。その距離を手繰り寄せれるようになりたいと、本気で思った。