当たり前だ。他の男の子が気になってる彼女なんかいらない。


別れをいわれて当たり前なんだ。


わたしだって、別れたくないなんて言えなかった。こんな中途半端な気持ちで。


終わりも始まりも、上手に気持ちを伝えられなかったな。


ただ市ノ瀬くんは最後まで優しかった。


わたしをもっと責めたりできたのに、ちゃんと怒れないのは、市ノ瀬くんもだ。


違うか。


怒るって、相手に期待できるからするんだ。


悪口を言わないで、嫌がらせをしないでって、相手に変わってほしいと伝えたいことがあるからだ。


怒らないのは、諦めてたんだ。わたしと付き合っていくことを諦めていたんだ。


ちゃんとしたお別れができた?と、考えるとそう思えなくて、やっぱりひどい子だと自分を戒めるのは簡単で、朝は今日もやってきた。







「まさか、あたしが風邪で休んでる間に、そんなことがあったとはね」


杏奈が窓を背もたれにして、呆れた顔をした。


「えへ」


「えへ、じゃないから」


体育館へ繋がる通路。市ノ瀬くんの姿が見えた。クラスメイトとじゃれあう後ろ姿が一瞬見えて視界からいなくなった。