気づいたら梅雨明けをしていて、春先のそんな出来事はすっかり風化してしまった。
『10分、休憩』
『あぢー』
放課後の部活。夏の体育館は、地獄だ。
凍らせてたポカリを飲み干すと、体育館前の水飲み場に向かった。
蛇口をひねり、太陽が溶け込んだようなぬるい水を手で受けて顔を洗う。
『高塚さーん、わたし達、向こうの花壇の水やりしてくるから!』
その声で、手が止まった。
聞き覚えのある名前。首にかけていたタオルで顔を拭きながら、ああ、あの教科書の女の子かと思い出した。
ゆっくり振り返った。
見ると、花壇の前にいたのは女の子ひとりで。
たぶんこの子がウレイちゃん。
春先と変わらないボブ。
ジョウロで、花に水をやっていた。
髪で横顔見えない。



