こんな静かな食卓ってなかったかも。口に入れるものが味気ない。


思えばママはおしゃべり担当で、わたしがいつも聞き役だったから、ママがしゃべらないと当たり前なのだけど。


「ママ」


「なに?」


「ごめんね」


「……」


「名前のこと、関係ないのに、怒って」


ママはご飯を飲みこむと、箸をテーブルの上に置いた。


「……正直、名前のこと気にしてるなんて思ってなかったから、驚いた」


「……」


「ママは、変な名前なんて思ったことなかったから」


「ママは同じ名前でも平気だった?」


訊くと、少し視線をあげた。それから首を振った。


「あなたが産まれたとき、本当に可愛くて、天使みたいだった。だからあなたに似合った可愛い名前をつけたくて、ママなりに考えてつけたから、自分のことに置き換えると、わたしに似合わない名前だと思う。だから、ピンとこないわ。やっぱりその名前は、あなたのものだもの」


でも、と続けた。


「本当に嫌だったら、名前変えてもいいよ」


ドキンとした。思いもしない選択肢だったから。