「ただいま」と家のドアを開けた。


ママからの返事なんかなくて、そのまま自室に向かった。制服を脱ぎながら、考えてしまう。


びっくりした。


隼人くんに『好きだ』と、言われるなんて思わなかったから。


どうすればいいんだろう。はっきりさせなきゃいけないと思うのに、気持ちが絡まった毛糸みたいだ。ほどけるどころか、変なところに結び目が出来て、余計にほどけなくしてる。


抱き締められた温もりや、隼人くんの声を思い出して、いたたまれなくなり、しゃがみこんだ。


ダメ。考えない。一度、落ち着こう。スマホを見ると、市ノ瀬くんから着信があった。


普通に話せる自信がなくて、手に持ったままリビングに向かった。


リビングから見えるカウンターキッチンにママの姿があった。夕食の用意はいつも通りにできているようだった。


ママはわたしに気が付いているのに声をかけなかった。それでも、無言でご飯をよそい始めたから、わたしも手を洗いに洗面所へ向かい、2人分の夕食をテーブルの上に並べた。