文化祭の日。迷路にひとり並んでいたときだった。受付の石川と目が合って、『あれ?羽麗は?』と声をかけられた。


『トイレだって』


『っそ』とあとは興味なさそうに頬杖をつく。話し相手もいなく暇そうに見えて、なんて俺のいいわけであって、少し弱気だった気持ちを確かめたかったのかもしれない。さっき隼人と一緒にいたことも、実は気になっていた。


『あのさ』


『ん?』


『羽麗ちゃんって、隼人と付き合ってたんだよな』


『らしいけど。なに?』


『ずっと引きずってたりしてた?』


真面目に訊いた。それなのに、石川はきょとんとした顔をしてから、口元を緩めた。


『……人生相談?あんたのクラスでやってたんじゃなかったっけ?』


こいつ。からかいの質が悪い。羽麗ちゃん、どうしてこいつと友達なんだ。


『あ、違うか。恋愛相談?』


『ちげーよ!でっかい独り言だ』


『ごめん、ごめん。怒んないでよ。市ノ瀬でもそういうこと、気にすんだね』


『は?』


『なんか誰とでも付き合うからさ。思い込み激しい奴かと思ってた』


……こいつ。失礼にも程がある。