抱きしめてた腕が離れて、ようやく自分のどきどきしていた鼓動に気付いた。


「ごめん。変なタイミングで言って」と、家のほうを見た。さっきと変わらない家の灯り。それなのに、気持ちをそわそわと刺激する。


「ううん」


「俺が好きなこと、覚えてて」


「……うん」


「番号、まだ登録されてる?」


「あ、うん」


「変わってないから。何かあったら、電話して。すぐ行くから」


「……あ」


「一人にさせないから。大丈夫」と、わたしの頭を優しくなでた。


甘えていけないし、頷いてはいけないとわかっているのに、頷きたくなる。


寂しさとか、そういう感情に寄り添うのはどうしていつも隼人くんなんだろう。


小さく頷いて、「気を付けて帰ってね」と、隼人くんを見送った。


すっかり夜になり、月がでてる。熱がある。頬に熱がある。


好きじゃないはずなのに、友達なのに、ちゃんと言い切れない。この感情はなんなんだろう。