実咲ちゃんの顔が過ぎって断ったけど、暗くなったからと隼人くんに言われて断り切れなかった。
実咲ちゃんのこと本当は気になってるけど、あまり詮索されたくないんだろうなと思うと言えなかった。
家の前に着く。窓から漏れた灯りが、いつもと何も変わらない日常を想像させる。パパはまだ帰っていない。幸子さんがおもちゃで遊んでいて、ママはきっと夕食を作って待っているんだろう。いつもと同じ営みがそこにある気がした。
「大丈夫?」
隼人くんは確認するように言った。頷いて返事をした。
「あの……今日は、本当に」
「またありがとうって言うの?」と、笑った。読まれていた。でもお礼を何度言っても足りないくらいだったから、「ありがと」と、伝えた。
「じゃあ」
「じゃあ」
背中を向けた隼人くんを見送る。ふうと深呼吸をして、胸に手を当てた。
隼人くんの言うとおりだな。
ママの言うとおりにしないといけないと思った自分がいて、でもママの言うとおりに思えない自分だっていた。
どっちもわたしなのに、後者のわたしはママがきっと良く思わない。
だからママに思ったことを言ってしまったあと、感じたのは、罪悪感で。
そういう気持ちでいっぱいだったんだ。
思ったこと、伝えるのは普通だから、ママとちゃんと話してみよう。
そう思えた。



