わたしに言ったんだと、足を止めてしまった。身を固くしたと同時に顔が熱くなるのがわかった。


キスしたの、見られてたんだ。


アハハと楽しそうな笑い声が背中に聞こえて、唇をかんだ。どきどきしていた。


こういうとき、彩子だったら、きっと言葉で打ち負かしてしまうんだろうな、と、いつものように置き換えて考える。


彩子に言われた。


『あたし、高塚の人任せなところ、嫌いだった』


そんなことないって、言いたくなった。わたしなりに考えていたんだ。


「あのっ」と、呼び止めると、彼女たちは振り返った。予想外だったのか少し驚いた顔をしていた。


「何?」


「あなた達がやったの?」


「は?何を?」


「わたしの体操着、切ったの?」


「はっ?何言ってんの?体操着、切る?」


「ロッカーに入れてた体操着が、めちゃくちゃになってて」


「ちょっとよくわかんないんだけど。体操着切るって、誰かした?」と、周りの子に確認するように訊く。彼女達の背後に、隼人くんがいた。胸がハッとした。