「別れてから、江野が高塚のこと最低とか言ってたのも、嘘だよ。そんなこと言ってなかった。

それと言うけど、江野は別れてから、ずっと高塚のこと好きだったはずだよ。

より戻したかったんだと思う。

高塚の態度が急におかしくなったから、一度離れたほうがいいと思ったみたい。

ひどいこと言ったって、自覚はしてるよ。

だけど思われてないと江野を勘違いさせたのも、別れてから逃げ出したのも全部、自分のせいなんだからね」


何も言えなかった。


「あたし、高塚の人任せなところ、嫌いだった。だから言ったよね、いつも。ちゃんと江野と話せって。言ったら、解けた誤解だったのに、こじらせたのは高塚だからね。だからあたしは悪くない」


「彩子」


「……って、今、高塚に言うのは、悪いって思ってるからか」と、力尽きたように呟いた。夕日が沈む。暗くなる。彩子の影か、日が沈むからか、境界線がわからなくなる。


「ごめん。バイバイ」


そういうと、背中を向けた。


わたしは、引き止めることができなかった。言葉を見失っていた。


それくらい頭が混乱していた。彩子が悪いのか、わたしが悪いのか、何が悪かったのか、判断つかなかった。