数日後。


初めてのことだった。お昼を市ノ瀬くんと一緒に食べるのは。本当はお弁当を作ってきたり可愛いことをしてみたかったけど、勇気がなかった。


裏庭の階段に座る。日差しが暑い今日は、日蔭が涼しい。市ノ瀬くんはお弁当だけじゃ足りないみたいで、購買部で買ったコロッケパンを頬張っていた。


「羽麗ちゃんって、あだ名なに?」


「えっ?あだ名?」


「うーちゃん?」


「小さいときはそう呼ばれてたけど。最近は、羽麗か高塚かなぁ。呼ばれるの」


「あだ名じゃないじゃん。じゃあさ、俺にだったらなんて呼ばれたい?」


「高塚」


「絶対、嫌だ」と、即答された。


「下の名前、嫌いだから、実はあんまり呼ばれたくないんだ」


「こんな可愛い名前なのに?」と、目を丸くした。