少しして、トイレに行きたくなってきた。
どうしようと思いながら、どうしようもないから、「お手洗い」と小声で伝えると、市ノ瀬くんと部屋を出た。
ほっと息を吐いた。やっぱりあの空気の中にいるのは、緊張したから。
「ごめん。本気で。大丈夫?あいつら無神経だから変なこと訊いてさ」
「ううん。わたしもごめんね」
「いや謝る意味がわからないから」
一階のトイレまで案内すると、「こっち、リビングだから。疲れたでしょ?ちょっと休もうか」と市ノ瀬くんは言った。
リビングに向かうと、ソファーに市ノ瀬くんは座っていた。
「おいで」と言うから、隣にそっと座った。
「実は、疲れてるでしょ?」
「……ちょっと」
「あとで文句言っておく」
「もう散々言ってるのに」と、笑った。それから市ノ瀬くんは急に真面目な顔になった。
「あのさ、言いたくなかったら、いいから。気になってたこと、あったんだ。それ、訊いてもいい?」
「気になってたこと?」
「隼人とさ、どうして別れたの?」
「えっ……」と、言葉を詰まらせてしまったのは、あの頃の自分があまりにも幼かったからだ。



