男子と会話はできません


休み時間に会うタイミングがなくて、結局、放課後になってしまった。


ホームルームが先に終わり、廊下で市ノ瀬くんを待っていると、嫌なことばかりが思い浮かぶ。


今度は応援に行けない代わりにお守りをあげるみたいに思われないかなって、心配になっていた。


やっぱり、やめようかなと思っていると、市ノ瀬くんが出てきて「あれ?待っててくれたの?」と、驚いた。


「……う……ん」


「もしかして、あれ?昨日から気になって仕方なかったんだよね。なに、なに?」と、わくわくした子供みたいに無邪気だ。


だけど、そこで目についてしまったのは、スポーツバックについているフェルトのバスケットボール。イニシャルが刺繍してある。もしかして、と、思った。


その視線に気がついて「ん?これ?マネージャーがくれたやつだよ」と手に取って見せた。やっぱり、マネージャー手作りのお守り。


渡せない。わたしの大して上手じゃないお守りなんて渡せない。


「どうしたの?固まって」


「ううん。なんでもない」


「なんか隠してない?」と、わたしの後ろ手が気になったのか、近づいて覗き込もうとするから、後ずさって壁に背中をつけた。


「か……隠してないよ」


「なんか怪しい」


「ううん」


「絶対、怪しい」と、腰を屈める。顔が近づくから、思わず息を止めた。