「出来た」と、ひとり家で慣れない裁縫をしていた。どうにか終わったと、肩の力が一気に抜けた。


市ノ瀬くんにお守りのプレゼントをしようと思い立ったのはいいけれど、作り方は簡単なはずなのに、出来上がったのは、お世辞にも上手とは言い難い。


ユニフォームの形に白いフェルトを切って、ボンドで背番号を張り付けた。チームカラーの水色でイニシャルを刺繍してみたけど、読めるよね?と、不安になるレベル。


「喜んでくれるかな?」


やっぱり、渡せないかも。杏奈が持っていた陸上部のマネージャーからもらったお守りと比べられたら、鼻で笑われるだろうな。


でも、せっかく作ったし。


渡してみようかな。


そわそわした気持ちになって、『明日、渡したいものあるんだ』とメッセージを送った。前もって言わないと、勇気がなくて渡せなそうだというのが、勿論理由のひとつだけれど。


ノックもなく、突然ドアが開いた。ママだった。悪いことをしてるわけじゃないのに、思わずお守りを腕の下に隠した。