ここからだと、バスに乗っていかないと地下鉄のある開けた駅前の通りに行けない。


時間がかかるし、帰りがまた地下鉄と電車を乗り継ぐことになり遠回りだから、わたしはあまり行くことがなかった。


でも、それって、そういうところに行きたいってことなのかな?


デートだもんね。今日は。付き合ってから、初めての。


だから「行ってみる?」と恐る恐る訊いた。


「でも帰り大変じゃない?」と、察したように言うから首を振った。


「なんか悪い気がする。急だし。なんか他にないかなー。って、ここら辺ほぼ地元みたいなもんだから、ないのわかってるけど」


「あっ、そっか。家、近いんだっけ」


そう言いながら、市ノ瀬くんは彼女が何人かいたりしたんだなぁ、ということを思い出し、放課後のデートなんてものは、行くところがないとわかるくらい探したりしたのかな、と頭を過った。


元カノと過ごした場所で遊んだりするのって、少し複雑かも。


嫌とは言わないけど、市ノ瀬くんにとってはきっとアイロンをかけたハンカチに折り目をつけるような丁寧で背筋を伸ばしたくなるような気持ちには、ならないんだろうなって思えるから。


自分だけかと思うと少し寂しいのかな。


「それかさ、家のほう来る?」


「……えっ?家?」


「いや。家っていうか……あっ、近くに公園あるからそこでも行こっかってことだよ?」と、慌てたように言った。