「ええと……ごめんね。

えっとね市ノ瀬くんと仲良くしないでって言われて、返事できないでいたら、水かけられて、警告って言われたの。

それだけだから、怪我してないし、それから何もされてないし」


「水っ?」と驚きのあまり立ち上がった。


羽麗ちゃんは、俺がどこかに行くと思ったのか、引き止めるかのように腕を掴んだ。


「本当に大丈夫だよ」と念を押すように言った。


「大丈夫じゃないから、全然。俺、言ってくるから。男とか女とかこういうときは関係ないからね」


「いいの。大丈夫」


「なんでいいの?何もいいことなんか一つもないよ」


「だって、またこういう風なこと起きる」


「……俺、守りたいよ。羽麗ちゃんのこと。どうしたらいいかな。言わないでほしいって言われたらどうすればいいかな。あっちが警告だっていうのなら、俺だって、向こうにはっきり自分の気持ちを伝えたいけど」


「……うん。それはわかってるけど」


ああ。なんだろう。こういうとき、俺ってずるいことが浮かぶんだ。


若槻って、本当にまだ可愛いもんだよな。そんなこと冷静に思った。