「……」


「なんで言ってくれなかったの?」


「えっ……と」


「うわ、ごめん。嘘、今のなし。忘れて」


大事なのはそんなことじゃない。言いながら自分が最低だと思った。


「何されたの?」


そう訊くと俯いた。これも訊いてはいけないことだったのか。


「じゃなくて、ああもうダメだ」と、迷わず羽麗ちゃんを抱きしめてしまった。


華奢な身体にふわりとした優しい香りが鼻腔をくすぐる。なんでひとりで抱え込んじゃうんだよ、バカと言いたくなった。


だけど、そこでまた我に返って、慌てて腕を離した。


案の上、羽麗ちゃんの顔は真っ赤で、自分もなぜか恥ずかしくなる。


「ごめん」


「い……え」


「座ろうか」と、椅子に座って取り直す。


いちいち、決まらないな、俺。暴走してどうするんだ。