男子と会話はできません


今の話、聞かれた?


金縛りにあったみたいに、身動きが出来ない。


「ノート、サンキュ」と、杏奈に渡した。


「どういたしまして」


しばらくしてから、杏奈が「ナイスタイミング」と呟いた。


「聞こえたかな?」


「聞かれただろうよ。計算したかのような登場シーンだわ」


そういってノートをわたしに差し出した。


「つうかもうこの遠回し裏家業、卒業しなさいよ」


実はさっき、隼人くんの『英語の訳当たるのに途中までしかやってなかった』という会話が聞こえて、杏奈にノートを渡してほしいとお願いしてしまったんだ。


もちろんわたしの名前は伏せて杏奈のノートということにして。


「ごめんなさい」


今に始まったことじゃなく、体育祭で擦り傷をつくったときにも杏奈に絆創膏を渡してもらったこともあった。


杏奈の言う裏家業とはつまりこういうことだ。