男子と会話はできません


「あ。行実先輩」と女の子の声がした。


「あー。若槻」と、市ノ瀬くんが返事をするから顔を上げた。


同じ制服を着た子がいた。綺麗なストレートの髪に、小さい顔。手足が長くて、見とれてしまいそうだった。


「何してるんですか?」


「秘密ー」とはぐらかす。


「また炭酸ですかー?本当に好きですね」と、自転車のハンドルを握ると、「さようなら」と会釈をして背中を向けた。


「……きれいな子」と、呟いていた。


「羽麗ちゃんのタイプ?」


「えっ?」


「嘘、嘘。マネージャーだよ。中学も一緒だったから、懐かれてる」


懐かれてるって、動物じゃないんだから。


でも下の名前で呼ばれてるのあまり聞いたことがなかったな。中学が一緒ってことでなんとなく腑に落ちた。


どこの部活もマネージャーって、いるんだなぁと、ぼんやり考えてた。


授業以外の部活という時間を共にするって、きっと特別。


好きなことを一生懸命やっている姿をいちばん近くで見ることができるんだから。