「はーやと」


語尾に音符でもついているみたいに弾むように呼んだのは、市ノ瀬だった。


「なに?」


「面貸せ」


「嫌だ」


「お前クラス離れただけで、何冷たくなってんだよ」


「はいはいわかったわかった」


少し早めに昼休みの体育館に行くと珍しく人がいなかった。


いつもなら、バスケをする生徒が集まり始めているのに。


「ラッキー」と、市ノ瀬はバスケットボールを取ってくるとその場でドリブルをする。


「あのさ、俺、お前に訊きたいことあんだ」


「何?」


「羽麗ちゃんと付き合ってたって、本当?」


と言うと、バスケットボールを勢いよくパスした。