『高塚、花火大会行かない?』
中学の三階の校舎。
トイレ前の手洗い場で髪をとかしていたら、隼人くんに声をかけられた。
『行く予定ないよ』
『みんなで行こうって話になったから、誘ったんだけど』
その頃のみんなとは、隼人くんの陸上部の友達とかその彼女やその友達を指していた。
そしてわたしは、隼人くん以外の男子とは話さないようにしていたら、こういうイベントに男子から誘われたことがなくて戸惑った。
『行って大丈夫なの?』
『うん。だから誘ってる。嫌なら良いけど』
『嫌じゃない。行く』
そう言うと微笑む。
わたしが、隼人くんの微笑みや声や仕草を愛おしいと思ったのはいつからだろう。
そのときには、もう思い返せなかった。



