引き返そうかとも思ったけど、幸子さんの勢いに引っ張られ足が進む。


仕方なく俯いていると、茂みに幸子さんが入って行ったから立ち止まり川のほうを向いた。


足音が近づいてくる。


どうしよう。どうしよう。


そのまま近づいて、遠のいて行った。


……それは、そうだ。


話しかけられると思ったのかな、わたし。バカみたいだ。


ドキドキする鼓動が少し落ち着いてきた頃、


「幸子さーん、そろそろ行くよ?」


とリードを引っ張る。


見てはいけないと、思っているのに、視界の端っこにいるであろう隼人くんを探した。


振り返ったりすることもなく、真っ直ぐ家路を歩いてる。


なんだか綺麗な背中だった。








隼人くんは犬が好き。


昔ならきっと立ち止まり、わたしに声をかけ幸子さんに触れただろうなって、想像する。


友達だったあの頃。


気まずくして、距離を置いてしまったのは、わたし。


なんでまだ隼人くんを見ると、胸が痛むんだろう。


付き合ったのは中三で、もう高校二年生なのに。