「うるうるうるるー」


「変な名前ー」


「なんなのよっ!」


また始まった。


小学四年生。廊下側の一番前が俺の席だった。


休み時間、ことあるごとにクラスの男子がある子にこうやって、ちょっかいをかける。


うるる。


一度聞いたら、忘れられない名前。ちなみにその当時飼っていた犬の名前がウララだったから、その名前にだけはちょっとした親近感を勝手に抱いていた。


高塚羽麗と書くらしい。


漢字見ると綺麗な運びで、由来なんて知らないけど、きっとそれなりに意味はあるのかもしれない。


だけどあんなに怒るってことは、たぶんきっと本人は気に入ってないんだろうな。


その子もその子で、放っておけばいいのに、言われる度に言い返したり、逃げていく男子を追いかけたり、文句に対して律儀な対応をしていた。


強がりな子。


まあいいんだけど、問題はどうしていつも俺の席の前でそのやりとりが始まるんだ。


迷惑。