ー高2の5月。
私風村かれん(かざむらかれん)は
これから吹山(ふぶきやま)高校に通う。
私は転校生としてここにやってきた。
私の人生を1からやり直すために…。

ドンッ

「おい!どこ見て歩いてんだ!」
体の大きな金髪男とぶつかってしまった。
「す、すみません!」
私はすぐに謝った。
「ってよくみたら可愛いじゃん!
 今から付き合ってよ!」

(…はい?)

「ほらほらーこっち来いよ。」
そうやって私の腕をつかんだ。
「は、離して。」
「やーだね。さぁどこ行こっか~♪」

(この人離す気配無いし…困ったな。)

その時目の前に一人の黒髪男が現れた。
「おい!女に手を出すんじゃねぇ!」
そういって金髪男を殴った。

(た、助かった~)

「ちっ、覚えてろよ!」
金髪男は逃げるように去っていった。
「助けてくれてありがとう。」
「ああ。」
黒髪男は一言いうと学校へ入っていった。

(あ…ここの生徒なんだ。あの男は一体…。)


学校の中に入った私は職員室に向かった。

ガラッ

「失礼します。」
「おお、君か。転校生は。」
「はい。長井先生ですか?」
「そうだよ。教室へ案内するからついて来て」
そう言われて私は教室へ向かった。

「合図したら入ってきて下さい」
そういって長井先生は中に入った。
「静まれ!」
ピタッとザワザワがやむ。
「今日は転校生が来ている。
 温かく迎えてくれ。わかったな?」
「先生!男と女どっち?」
「女子だ。入ってきていいぞ。」
私はドアを開けて中に入った。
「自己紹介してくれ。」
「風村かれんです。よろしくお願いします。」
「おーー!女子だーー!」
「やったー!すっげー美人じゃん!」
ザワザワと騒ぎ出す男子達。

(うわー…まるで猿みたい。)

「うるさいぞ、みんな。
 風村さん。空いてる席に座ってくれ。」

(空いてる席…無いんですけど…)

さっき助けてくれた黒髪男と目があった。
何となくそこに行こうとすると、
「陸はやめた方が…」
「なんで?」
「陸さんは女嫌いなんです。」

(はい?女嫌い!?)

「別にそいつならいい。」
「は?何言ってんだよ、陸」
「どうしちまったんだよ!」
「別に。」
「交渉成立ってことでいい?」
「ああ。」
ザワザワと騒ぎ出す男子達。

(コイツ等本当にやかましい。)

「騒がしいぞ、お前ら。」
ピタッとザワザワがやむ。

(やっぱりこの先生すごいかも。)

「転校生と仲良くするんだぞ」
「「はーい」」
「それでは解散!」
そう言って長井先生は出て行ったのであった。
チャイムが鳴ると同時に女子2人が来た。
「私は桜木美久(さくらぎみく)。よろしくね」
「あ、うん。よろしく」

(赤色の髪の毛だ。)

「私は水野静(みずのしずか)。
 よろしくかれんさん。」
「こちらこそ静さん」

(こっちは水色の髪の毛だね)

「静だけでいいよ。」
「私も美久でいいから。」
「分かった。私のこともかれんって呼んで」
「「分かったー」」
「女子ばかりずりーぞ。俺は龍川明(たつがわあきら)よろしくー!」

(この男…チャラいし、頭金髪。)

「それにしても勇気あるよねー」
「え?」
「陸さんはすごい人なのよ」
「と言うと?」
「私達の県には4つの族があるの。
 北は天龍、南は地龍、東は陽鬼、西は夕鬼。 ここは北地方だから天龍が多いの。」
「で、天龍の幹部の一人が陸さん!」
「幹部なんて滅多に入れないし、
 それに天龍はこの県のトップ族なの!」
「すごいね。」
「でしょでしょ!」

(さっそく族と関わってしまった…)

「どーかした?かれん」
「あ、いやートイレ行こうかなって」
「ついて行ってあげようか?」
「だ、大丈夫大丈夫!」
「気をつけてねー」
私は逃げるようにトイレに駆け込んだ。

(何でこんなことに…)

まさか族が居るなんて思ってなかった。
私が住んでいた場所からだいぶ遠いのに。
これってどこに行っても族は存在するのか?
はー…聞いてないよー。
私は族と関わらないって決めてたのに…。

「おーい、かれーん。出てこいよ」
さっきの金髪男が私を呼んでる。
私はトイレから出た。
「何?」
「いや、体調悪いんかなっと」
「平気よ」
「それにしても、かれんは可愛いね」
と言って私の髪を触ってきた。
「やめろ!触るな変態!」
「は?何が変態だよ?」
「私の体に気安くさわるな」
「いいじゃん別にー」
「よくない!来るな~!」
と言って私は走って逃げた。

そして私は知らない場所に来てしまっていた。

(げ。道に迷ったかも)

どこか分からずウロウロしていると、
「大丈夫?そこのお嬢さん」
振り返ると緑の頭がいた。
「えっと、道に迷ってしまって。」
「見かけない顔だね。転校生?」
「はい。」
「そっか。2先生ってきいてるけど?」
「はい。2年です。」
「送ってってあげる。ついて来て」

(この人優しい…。)


「かれーん!どこ行ってたのよ~」
「ごめんごめん。」
「次から気をつけてね。転校生ちゃん」
「はい。」
「あ、昌(まさ)!何でここに?」
「転校生ちゃんが道に迷ってたから送りに」
「本当にすみません。」
「大丈夫大丈夫。」
「だっせーかれん。」
「言ったな~このナンパやろー」
「ごめんなさーい!」

こんな平和な日々がずっと続くと思ってた。
でも私は、族の世界へと引きずり戻される。

私は一生この世界でしか生きられないんだね。