彼がこちらを向いた。



目があった。



心臓がトクンと音をたてる。


そして、彼の顔は優しい微笑みを浮かべたまま少し頭を下げた。


きっとそれは私に対するよろしくのサイン。




私の緊張はそのサインに答えることも許さず、一気に高揚する体を沈めようと必死で、目をそらした。


変なやつだと思われた。




私は恥ずかしさに眼鏡をかけ直した。


その時、友梨亜が帰って来た。






「トイレ混んでたぁー。」


固まる私の肩を叩いて隣に座る。


やっと私の異変に気付いたのか顔を覗き込まれた。




「どうかしたの??眼鏡。曇ってるよ。」


友梨亜の声が大きい。


ますます恥ずかしくなってあたふたしながら眼鏡を拭いた。



「なっなんでもないよ!!」