「それに要くんと二人っきりになれるのに帰っちゃうなんて勿体ないよー」


そう言って満面の笑みを浮かべた彼女に俺の顔は更に渋くなった。



そう。

鈴村は俺のことが好きらしい。



けれど正直ちっとも、本当に、ちっとも、嬉しくない。


何故ならば、鈴村は素晴らしいほどに俺の嫌いな「バカな女」を具現化したような女だったのだ。



「あれ、どうしたのー、黙っちゃって。もしかしてトキめ……」

「何回目か分からない言葉にうんざりしてたんだ」

「ええ、そんなーー」


まずこの語尾の伸びた話し方。


ふわふわしていて可愛いなんて言うやつもいるが頭の中がふわふわしてるんじゃないのか。そして話し方に似合って話す内容もふわふわ中身のないものばかりだ。


そしてコイツの超恋愛体質。


なんと鈴村は初めて図書室を利用した、その日に俺に告白をしたのだ。

しかも内容は、


「一目惚れしました!好きです!付き合ってください!」

と、いったもの。


別に特に何も惚れられるようなことをした覚えがなく、むしろそのとき初めて話をしたのだ。あまりの展開の速さ
に驚きすぎて動けなくなった俺をよそに鈴村はにっこりと笑っていたのを覚えている。


そしてその次の日からはさっきのような俗にいうアピールというものを受けるようになったのだった。