職員室を出たあと、俺らは黙り込んだ。
考えることが多すぎた。

俺たちは午後の授業をサボり、話し込むことにした。


話し込むと決めたのに、しばらく沈黙が続く。

すると、
「…雪原真白」
ぽつりと駿が呟いた。

「なぁ、俺、雪原真白のこと知ってると思うんだ。みんなもそうなんじゃないか?」


「やっぱり駿も思ってたんだね。私もだよ。」


「俺も。…でも誰かがわからない。とても大切な人のはずなのに。」


思い出せそうで思い出せない。
頭の中で突っかかる。


「雪原夫妻と関係あるよな、やっぱ…」


やっぱり高塚未羽と雪原夫妻は関係があった…?


「高塚未羽と雪原真白は友人だったとか?」

「友人…友人で、未羽は雪原夫妻の家に住むのか?」

「じゃあ姉妹?」

「うーん、なにか違うような…」

俺たちが雪原真白について口論する間、梨華はずっと黙っていた。


「これは1つの可能性として聞いてほしいんだけど…」

梨華が下を向いて言う。


「高塚未羽が雪原真白っていう可能性はない?」


「!?
どういうこと?高塚未羽は偽名ってことか!?」
駿がありえない!と言う。


「私もわかんないわ!
…でも、なんだかそんな気がするの。
未羽は私たちのこと知っていて、しかもだいぶ親しくて、でも私たちは未羽を思い出せない。
雪原真白のことも思い出せない。
そして未羽が雪原さんの家に住んでいること。雪原夫妻の写真を飾っていること。…あとはカンよ。」


駿は"カン"の言葉にぽかんと口を開けた。
「お、おいおい梨華。カンとか冗談はよせよ…

「実は俺もそう思った」
駿が言い切る前に言う。


「お、おい天まで何言ってんだよ!」

「…俺さ、雪原真白って聞いただけですげー愛しくなったんだよ。本当に。なぜだかわからないけど。んで、そん時に未羽の顔が浮かんだ。」