「も、桃花ぁ!?急に呼び捨てとかやめてよびっくりしたなぁ」
「えっ」
予想外の桃花の言葉に、今度は心の声が漏れてしまった。
「日野くんって案外プレイボーイなわけ?」
少し引きつった顔で碧人くんを見る桃花の表情は、明らかに驚いている様子だった。
「お前の苗字知らないんだよ。二宮がいつも桃花って呼んでるから」
「あ〜、なるほどねぇ……日野くんいっつも芽衣子のこと考えてるからうつったんだぁ?」
「へっ!?」
にやにやと不敵な笑みを浮かべる桃花に「はぁ!?」といつもの冷静さを感じない碧人くん。
ど、どういう意味!?
「コスプレ衣装の着替え行くときにもさぁ「こんなの着たら二宮がうるさそうだな」とか「二宮は運動得意なのか?」とかずーっと二宮二宮うるさいんだもん」
「やれやれ」と大袈裟にため息を吐く桃花を見て、碧人くんが耳まで真っ赤に染めていた。
どれが本当で、どれが勘違いなのかわからない。
「あたしは澤井(さわい)桃花。一応これでも彼氏持ちだから苗字で呼んでよね?」
「わっ、わかったから余計なことを言うな!」
「えー、余計なことってなにかなぁ?」
「っ……むかつく女……」



