お弁当を片付けた後は、グラウンドに向かって桃花と並んで歩いた。
今日は話を逸らしてばかりかもしれない。
今の関係を壊したくなくて、碧人くんにドキドキする自分が嫌で、恥ずかしくて。
友達という超えられない一線を引くことで全てが幸せなはずなのに。
なんだかそれがモヤモヤしてしまう気持ちも嘘じゃない。
ただ側に居たい。
それだけだから、やっぱりこの気持ちはきっと恋じゃない。
「ーーーあっ、見てよ芽衣子!日野くんの番回ってきたんじゃない?」
「え、もう?」
桃花の指先が示す先には、スタートラインに並ぶ碧人くんの姿があった。
「うひゃー、人集りすごいなぁ」
グラウンドは既にたくさんの生徒で溢れかえっている。
せっかく碧人くんの番なのにこれじゃよく見えないや。
……ううん、それとも見えない方がいい?
こんな複雑な気持ちのままだと、真っ直ぐに碧人くんを見れないかもしれないから。
「頑張れ……碧人くん………」
届くはずのない小さな声で、そっと碧人くんの名前を呟いた。



