「え?」
いつの間にか手元まで伸びてきていた碧人くんの細い指先が、わたしの作った玉子焼きを掴んでいた。
あっ、えっ……碧人くん……?
止める暇もないくらい一瞬すぎて、口の中へ消えていく玉子焼きをただ見ていることしかできなかった。
「………ん、うまいじゃん」
「………っ!」
目が合った。ドキンと胸が高鳴った。
顔、熱っ……。
そんな優しい笑顔を向けられたらいくらなんでもドキドキするに決まってる。
単純だと思われそうでなんだか恥ずかしいけれど、その通りだから、わたしは簡単に落ちてしまう。
「碧人くーーー」
……ピーンポーンパーンポーン。
『…借り物競争に出場する選手たちはグラウンドに集合してください。繰り返します、借り物競争競争に出場する選手たちは…………』
「あ、俺行かないと」
「なっ…」
わたしの精一杯のひと声は、タイミングよく重なった放送のせいで途中で終わってしまった。
ガクンと肩が落ちたわたしを見て、2人とも不思議そうに首を傾げている。



