けれど、そんな時間も長くは続かず、

「……っくしゅん!」

わたしの情けないくしゃみの音で沈黙は破かれた。


「あっ……ごめん。寒いよな」

「う、うん………」


バッと離れた体の距離。

照れくさそうに目を泳がせる日野くんは、いつもと雰囲気が違う。

優しい雰囲気が初めて会ったあの日と重なって見える。


「………少し話さないか」

「え?」

「俺に聞きたいことあるんだろ?」

「それは、まぁ……そうだけど……」


聞きたいことはあるけれど、こんなびしょ濡れのままじゃ聞ける話も耳から通り抜けてしまいそう。

でも、今を逃したらもう2度と日野くんのことを知れないんじゃないだろうか。