どうして気づかなかったんだろう。
……いや、きっと気づかない振りをしていたんだと思う。
自分勝手に逃げることで、忘れられた現実を無理にでも受け入れようとしていた。
わたしを忘れた碧人くんと向き合うのが怖かったんだ。
でも、キミは違う。
1番辛いはずの碧人くんが、わたしを迎えに来てくれた。
自分の気持ちを犠牲にしてでも、北上さんは碧人くんに自ら未来を選ばせた。
それなのに、わたしはまだ逃げるの?
逃げてばかりいるわたしが、1番碧人くんを傷つけてるんじゃないの?
「碧人くんの側に居たいよぉ……」
感情と共に溢れ出した涙が、とめどなく零れ落ちた。
もしもまだ、碧人くんの隣に居ることが許されるなら離れたくない。
遠ざかってわかったの。キミが居ない未来ほど、こんなに辛いものはないと。
「ったく……なんでまた泣くんだよ」
困りげに笑いながら、わたしの涙を拭いてくれるこの温かい手をもう離したくない。
碧人くんが、大好きだから。



