「キミが好きだった…………たぶん」


それは、わたしが碧人くんに伝えたかったはずの言葉だった。

風に乗った声のは、とても切なく胸に響く。

わたしを好きだった……?

たぶん……?


「瑠璃に言われたんだよ。お前を忘れる前の俺は、二宮芽衣子が好きだったって……」


それはつまり、わたしと一緒に日々を過ごしていたときの碧人くんの気持ち。

急に変なことを言うから驚いたけれど、そんなわけない。


「嘘だよ。キミが好きなのは北上瑠璃さんなんだから」


碧人くんが好きなのは、昔からずっと北上さんただ1人。大切な彼女だもん。

だから少し寂しかったんだ。

絶対に叶わない恋をしてしまったから。


「嘘じゃない。覚えてないからよくわからないけど、俺は好きでもない女に自分からキスなんかしない………」