それからわたしは、碧人くんと過ごした思い出を辿るように、あの日通った道を再び踏みしめていた。


最初に訪れた場所は、碧人くんが住んでいた昔の家。

あのときは寂しそうに見えたけれど、今日はどうだろう。


碧人くんの記憶が戻ったのなら、またここに住むことができる。

空っぽだって、またたくさん思い出が作れると思うの。


「一緒に来たとき、“今”を捨てたりないって言ってくれて……すごく嬉しかったな」


碧人くんがくれる言葉は、全てがとても優しい。

わたしと過ごした思い出も大切だと、言葉にしてくれたような気がした。


碧人くんは過去に囚われずに前を向いて生きていける人だから、今の自分を支えてくれる人たちを大切に想っているはず。

そこにわたしが居ないのは苦しいけれど、過去の人間になってしまった以上、どうするこもできなかった。


「辛いけど、碧人くんと一緒に居られただけで十分だよ……」