ーカタンッ

部屋の棚から、1冊のノートが滑り落ちた。

「あ、これ……」

音に気付いてベッドから起き上がるが、あまりにも予想外の物が落ちていたから、くすりと笑ってしまった。

懐かしい思い出が指先から伝わってくる。


「まだ捨ててなかったんだね。作戦ノート」


拾い上げたノートの表紙には『碧人くんの記憶を取り戻そう大作戦』と大袈裟に書かれていた。


夏休み最終日。

特にすることも無かったわたしは、いつも通り部屋で暇を持て余していた。

部屋の掃除とか、明日の学校の準備とか。やるべきことはあるけれど、やる気が出なかったと言う方が正しいかもしれない。


ここ数日、魂が抜けたように部屋でぼんやりする時間が多かったせいで、何の面白みもない毎日が続いている。


「……何をしたって、今はつまらないよ」


ノートを持つ手が震えた。

こんなにも心が寒いのは、全て自分のせいだとわかってる。

それでも、昔のように笑えない。

寂しさと苦しさに押し潰されて、今にも消えて無くなりそう。