「そっか………そう、なんだね」
いつもよりワントーン低い、瑠璃の切なげな声が耳に響く。
昨日の涙といい、瑠璃もあの子もなんでそんな寂しそうなんだよ。
まるで、俺が悲しみを運んでいるみたいだ。
「あーあ!わたしの時はそんなこと言ってくれなかったのに。負けたのかな……」
「瑠璃……?」
なんだよわたしの時って。なんだよ負けって。
瑠璃は、俺の知らない何かを知っているような素振りを見せる。
そして、今にも泣きそうな瞳で俺を見て言うんだ。
「教えてあげるよ。碧人の長い夢の話。記憶を失っていた時の話」
記憶を失っていた時の話………?
ドクンと重苦しい音が、俺の心臓を叩いた。
なんだ……記憶を失っていた時の話って。
「碧人。碧人はね、大切な記憶を忘れちゃってるんだよ」



