病院のベッドの上で、何度同じ夢を見ただろうか。

目を閉じて眠りにつくたび、いつも決まって同じ夢を見る。



何も存在しない、ただ真っ白な空間が続く世界にひとりきり。


頬をつねっても痛みがない。


「ふぅ…」


手に息を吹きかけてみた。

細くて弱い風が手に触れた。

体の痛みは感じないのに、風の感触ははっきりしている。

夢とは本当に不思議でおかしなものだ。


感覚は鈍いのに意識ははっきりしていて、生きていることをしっかり実感できる。


「変な感じだな」


声は反響しなかった。

この真っ白な世界は、いったいどこまで続いているんだろう。


俺はこの世界の壁に触れたことがない。

なぜなら、俺がこの夢の中で動けるのはたった数歩だけだからだ。


1歩、2歩、3歩。

ゆっくりと地面を踏みしめて前へ出た。


「……また、ここまでか」


4歩目。足が止まった。