今、碧人がこうしてわたしの隣で笑ってくれているのは、間違いなく芽衣子ちゃんのおかげ。


わたしは何もしていない。


むしろ碧人の人生を壊した張本人でもある。

そんなわたしが何食わぬ顔で碧人と一緒にいてもいいの?


芽衣子ちゃんがいなかったら、碧人とは会わなかったかもしれない。

芽衣子ちゃんは碧人のことを想って、考えて、背中を押してあげてたのに。


わたし……まだ碧人に何もしてあげられてないよ。


忘れられたことに怯え、大好きな人と他人になった現実を受け止めきれなくて。

碧人が過去から逃げたように、わたしも忘れられた過去から逃げていた。


島を出て行った碧人を追い掛けることもせずに、安全な場所で寂しさに震えていただけ。

どこまでも追い掛けて、必死に縋って、好きだと言えばよかったのに。


わたしには記憶を無くした碧人を支える勇気も、決意もなかったんだ…………。


今ならまだ間に合う。

記憶を無くしていた頃の記憶も全部含めて、それが碧人だから。