…………嫌だよ。


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ………!


碧人くんがわたしのことを忘れちゃったなんて、そんなの信じたくない。


忘れたなら思い出して。

何度だって教えるから。

碧人くんと過ごした日々を、わたしだけの思い出にしないで。

わたしを見てほしい。


「芽衣子」って名前を呼んでよ…………。


「………ひゃっ!」


足元も見ずに無我夢中で走っていたら見えない段差に躓いて、

「痛っ……」

硬いコンクリートに体を思いっきり打ち付けた。


なんてタイミングだろう。

わたしが碧人くんに思い出してほしいって願ったから?

でも、誰だって大好きな人に忘れられるのは嫌でしょう?


北上さんも碧人くんのお父さんとお母さんもこんな気持ちだったのかな………。


わたしは碧人くんに出会って日が浅いから、他の人より痛みが少ないと言われればそれまでだけど、簡単に割り切れるわけがない。