こんな簡単に別れてしまうなら、碧人くんに好きだと言えばよかった。

今までずっと見て見ぬ振りをしてきた感情だったけど、いざ行き先を無くすとこんなにも虚しくなるなんて。


絶対に叶わない恋でも、わたしにとっては大切にしたい想いだったから。


「…………あっ、涙…」


ようやく1人になれて力が抜けたのか、堪えていた涙が今になってポロポロと零れ落ちていた。


泣いたって何も変わらないのに。

止まってよ。

泣きたくなんかないよ。


「っ………!」


どうにか気持ちを紛らわそうと、暗い夜道を走り出した。

目に映る情景は全て真っ暗で、どこに向かって走っているのか自分でもよくわからない。


知らない場所だっていいよ。

碧人くんが居る場所から離れらるならどこだって構わない。


碧人くんの記憶を取り戻そうとしてきたのはわたし。

わたしがこの結末を生んだの。


でもさ、碧人くんがまた記憶を失くすとは夢にも思ってなかったんだよ。

記憶が戻った後も今まで通り碧人くんの隣に居られるんだって………。


なんで、どうして。