泣いているわたしたち3人を横目に、碧人くんがゆっくりとベッドから体を起こす。


「起き上がって大丈夫なの……?」

「あ、あぁ……」


心配して体を支えると、変に距離感がある碧人くんの声が返ってきて、なんとなく違和感を感じた。


「えっと………」


碧人くんの記憶が戻ればお母さんとお父さんと本当の家族になれて、北上さんとも恋人に戻れる。

幸せしかない世界が始まるんだって思っていたのに。


感じた違和感はどんどん勢いを増して、


「こんなこと、言っていいのかわかんないけどさ」


止まることを知らずに加速していく。



「アンタ、誰?」



幸せには程遠いわたしたちの未来が始まる。


目が覚めたら「芽衣子」って呼んでくれるんだって。

今度は1番の友達になるんだって。


そう、思っていたのに。


目覚めた碧人くんの瞳には、わたしの姿が見えていなかった。