「あっ、碧人!わたしのことは……わかる……?」


泣き出す碧人くんとお母さんとお父さんの隣で、不安そうな瞳を揺らしながら北上さんが碧人くんに近づいた。


「……瑠璃………?よかった……無事だったんだな…………」

「なぁに、その言い方……遅すぎだよ、もう」


碧人くんのお母さんもお父さんも北上さんも。

みんな泣いてるのに顔は笑っていて嬉しそう。


「っ……」


わたしも、目尻に涙が浮かんだ。


これで碧人くんは失われた過去に囚われず、真っ直ぐ未来を見据えて生きていけるんだ。

わたしたちがこれまで過ごした日々は全部無駄じゃなかったんだね。

わたしも嬉しいよ………。


「碧人くん、よかったね……」


こんなとき、なんて言えばいいんだろう。

ただ碧人くんの記憶が戻ったことが自分のことのように嬉しかった。



ーー嬉しかった、はずだった。