気がついたら、白いベッドの上に横たわる碧人くんを見ていた。


何が起きているのか全くと言っていいほど理解できていなくて、自分がなぜこの場に立って居るのかさえわからない。


慌ただしいこの状況で唯一わかることといえば、わたしの隣に北上さんが立っていることと、

……碧人くんのお父さんとお母さんが同じ空間に居ること。



数分前にパワーストーンのお店で碧人くんが突然倒れ、店員さんが呼んでくれた救急車にわたしが同乗して病院に向かった。

どうしたらいいのかわからなかった。

北上さんに助けを求めて電話を掛けると、病院に着いた頃には碧人くんのお父さんとお母さんも一緒に立っていて。


放心状態のまま看護師さんの案内を受け、連れて来られた病室にはベッドの上で眠る碧人くんの姿があった。


「先生、それじゃあ碧人は………」


そんな静かな空間の中、心配そうに碧人くんを見つめるお母さんの声がぼんやりしているわたしの耳にも届いた。


「はい。おそらく……」


次に聞こえてきたのは、真っ白な白衣に身を包んだお医者さんの声。

恐らく碧人くんを担当してくれる先生だろう。


そして、未だに何が起こっているのか理解しきれていないわたしに追い打ちを掛けるかのように、先生は言葉を繋げる。


「碧人くんは何らかのきっかけにより、忘れていた記憶を思い出したのだと思われます」