「ふぅ……急に走るから疲れちゃったよ。観覧車乗りたかったの?」


観覧車に乗り込んだ後は、疲れを癒すようにすぐさま椅子に身を預けた。


向かい側にゆっくりと腰を下ろした碧人くんは、何も言わずわたしをじっと見てくる。

目が合えばドキンと心臓が飛び跳ねた。


そんなに見つめられるとちょっと恥ずかしいな………。


冷や汗が染みて出てきそうなくらいの変な緊張感だったが、


「そうだよ。ただ芽衣子と一緒に乗りたかっただけだ」


碧人くんの急なひと言で空気が変わる。


「な、なるほど………」


びっくりしたせいでパッとしない返事しかできなかった。

碧人くん、いったいどうしちゃったの!?

違和感のある甘い言葉を言い始めて、頭おかしくなっちゃった?


普段の碧人くんなら「会いたかった」とか「一緒に乗りたかった」とか、言わないでしょ?


いつだって碧人くんは素っ気なかった。

素っ気ないのが碧人くんだし、慣れてしまった今ではその冷たさがちょうどいいくらい。


だから急に変なことを言われると困るんだ。

そういう碧人くんに慣れてないんだもの。